N.W.O.B.H.Mを今に伝える数少ないバンド、PRAYING MANTIS初の仙台公演は 1998年11月9日ライブハウスMA.CA.NAで行われた。 会場のキャパシティーは200人前後と小さい会場で、 恐らく今回の日本ツアーでは一番小さい会場と思われる。 最近、仙台まで来るアーティストは減っており、 来たとしてもほとんどがライブハウスがメインという状況は不況であることを実感する。 しかし、ライブハウスのような小さい会場では観客のテンションは異様に上がり、 かなりの盛り上がりを見せるのもまた事実である。
さて、会場に集まって来る客層を見ると(あくまで昨年のGAMMA RAYとの比較だが) 平均年齢が高く感じる。中にはスーツ姿のサラリーマンの姿もあった。 やはり20年近いキャリアを持つベテランバンドである。 その中に若い観客もちゃんと見ることができた。かく言う私もそうであるが、 新作「FOREVER IN TIME」がかなり好評で、新しいファン層を確実に増やしたことが伺える。
ライブ開始1時間前となり会場となった。今夜のBGMはTERRA NOVAの「LIVIN' IT UP」 どうやら全曲リピートをしているらしく開演まで2回くらい回っていた。 私のいた場所は、真ん中の6列目ほどの所。オールスタンディングであるのと、 会場が小さいためヴォーカルのマイクスタンドまで2〜3mといったところ。 ホールのような会場では絶対に味わえない臨場感であろう。
BGMがフェードアウトし、客電が落ちる。いよいよライブのスタートである。 メンバーが下手の方から現れる。ステージ上手からティノ・トロイ<G>、クリス・トロイ<B>、 そして中央に新メンバーのトニー・オホーラ<Vo>。下手にはデニス・ストラットン<G>、 サポート・キーボーディストが陣取る。ドラム・セットに座るのは今回のアルバムから復帰したブルース・ビスランドである。 '98 PRAYING MANTIS JAPAN TOURの幕を開ける1曲目はアルバム「FOREVER IN TIME」と同じ "WASTED YEARS"であった。さすがに新メンバーであり、日本初ステージとなるトニーは緊張が隠せないようで、 少し固めであったが他のメンバーは1曲目から安定した演奏を聴かせてくれる。 今日はPAもよくPRAYING MANTISの武器であるコーラスも見事に再現されている。 トニーも徐々に慣れてきたのか、なかなかの健闘ぶりを見せてくれる。 さらにすごいのが会場の観客であった。サビ大合唱は勿論、曲間の盛り上げもすさまじく、 その盛り上がりはIRON MAIDEN時代数々のステージを踏んだであろうデニス・ストラットンも驚くほどであった。
途中のMCでのデニスからの「今度の新ヴォーカリストはどうだい?」 との問いがあったが、会場からは大歓声が起きた。 トニーは照れたように「Thank You」と言い、それにデニスが「They are crazy!」と返し会場の笑いを誘う。 トロイ兄弟とブルースはそれをニコニコと見守っているといった具合だ。 それを見ているだけでも現在バンドが良い状態にあることがわかった。 アルコールが入っているのか、会場の盛り上がりに満足したのか、デニスからは 「仙台に来たのは初めてだが、次に来るときは5回公演くらいやるぞ!」なんて発言も飛び出した。
ライブ本編は「FOREVER IN TIME」と「A CRY FOR NEW WORLD」もメインにセットが組まれ、 そこに他のアルバムの叙情系ナンバーが散りばめられた、まさに”日本人が好む” BEST OF MANTISのセットであった。また、途中ソロタイムがないこともあり、 ライブに一貫した大きな流れを作りそれを自在に操っていた。非常に質の高いライブであったと思う。
ライブは終盤に向かう。MANTISコールに急き立てられ、メンバーがアンコールのためステージに戻ってきた。
”あの”曲が演奏される。古くからのファンも、新しいファンも、そしてメンバー自身も特別な思い入れのある曲、
”Children of The Earth”である。会場のテンションは最高潮に達した。
叙情的で、哀しく、そして美しく、一時はバンドとともに死に掛けたこの曲を今、体験している。
サビは会場の大合唱でかき消されていた。
続いて、「FOREVER IN TIME」から「The Day The Sun Turned Cold」、
2回目のアンコールで「A CRY FOR NEW WORLD」から「Letting Go」が演奏され仙台公演は幕を閉じた。
2回目のアンコールの後もMANTISコールは止まず、メンバーはもう一度挨拶に姿を現わし終わりを告げた。
今回のPRAYING MANTISの仙台公演は大成功であったと思う。
初日、しかもキャパシティーの小さい会場とあって肩慣らしともとれるが、
実際、この夜の盛り上がりは他の会場に引けを取らないのではないかと思える。
何より、最高傑作と言えるアルバムを引っさげ、そして、
その内容に劣らない高品位のライブを見せてくれたことを考えると、
仙台での観客の盛り上がりは当然のことだろう。
今まで決して順調な活動を送ってきたとはいえないPRAYING MANTISだが、
今回のライブを見て、以前、炎誌でみた彼らへの言葉を思い出した。